▪️20年の封印を解いた日
「もしかして……まだできるかも!」
先生方も、私が剣道をしていたことを知っていて、
笑顔で「一緒にやりましょう」と誘ってくださった。
その瞬間、胸の奥で何かが音を立てて動き始めた。
「どうして、私は20年間も剣道を封印していたんだろう。」
身体を動かすことは、ずっと好きだったはずなのに。
基本の動きをまだ覚えていたことに感動して、
「まだやれるかもしれない」と希望が湧いてきて——
たぶん、この時の私は、
少しだけ調子に乗っていたのかもしれない。
■竹刀を握る日が、ついに来た
ある日ついに、竹刀を握れる時がきた。
子どもたちと一緒に、素振りをする。
初心者の子供も一生懸命がんばっている。
やり方は少し違う部分もあるけれど、
「わかる!」「振れる!」
そんな感覚が、手のひらに伝わってくる。
先生が「さすが経験者!」と声をかけてくださる。
私は笑顔で、「いやいや、もう腕がすぐだるくなっちゃいますよ〜!」なんて返していた。
ほんの少し、心が弾んでいた。
■まさかの視線と囁き
稽古終わり。
ふと顔を上げると——
そこには、スポ少のボスママたち数人がこちらを見ていた。
顔の横に手を当て、コソコソと話すスタイル。
3〜4人が円陣を描くように並び、
こちらをチラチラ睨みながら、何かを囁いている。
しまった……!
やってしまった……!
■“楽しさ”が空気を壊すとき
久しぶりに竹刀を握れた嬉しさに、私は浮かれていたのかもしれない。
テンションが上がって、周囲が見えなくなっていた。
「剣道に呼ばれてる気がする!」
そんなこと、言ってなかったっけ?
あの時の自信は、一気にかき消された。
■前途多難、それでも——
リバ剣、前途多難。
でも、それでも。
この小さな「できるかも」は、確かに私の中に残っている。
つづく。
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