【リバ剣に至るまで】”あの頃から”だったのかもしれない

【道場】リスタート記憶

「…はっきりした傾向が見られますね。」

医者の無機質な白い顔が、表情を変えずに口を動かす。

「えっ?」

病気…?なんの話だろう。

受け答えは完璧に、ハッキリできていたはずなのに、記憶が曖昧。

「以前は、もっと別の呼ばれ方をしていました。今は、こう診断されています。」

あぁ、なんとなく聞いたことはある。

確かに、自分でも気づいていた。

気持ちが不安定なことに。

「以前から、こういうことはありませんでしたか?」

「…あったと思います。産後に、気持ちが滅入っていた時とか。」

「もっと若い頃には?」

「学生時代、剣道をしていて。辞めたかったのに、辞められなくて。意地でも続けていた時期です。」

「その時から、かもしれませんね。」

処方された薬の名前は、聞きなれないものだった。

とにかく寝るように、また来るようにと言われた。

帰り道、ぼうっとしながら、

頭の中では、忘れていたはずの

高校時代の剣道部の竹刀の音、打ち込みの音がずっと鳴っていた。

剣道のことばかり、考えていた。

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